1 イントロダクション(1.6節)


1.6 歴史

HTML の誕生から最初の5年間(1990年~1995年)、始めは CERN、その後は IETF によって HTML は何度か改訂や拡張が行われました。

W3C の設立に伴い、HTML の開発は再びその場所を移しました。 1995年に HTML を拡張する最初の試みが HTML3.0 として行われ失敗に終わりましたが、その後 HTML3.2 としてより実用的なアプローチへと進化し、1997年に開発が完了しました。同年、すぐに HTML4 の開発が始まりました。

その翌年、W3C は HTML を進化させることをやめ、代わりに XHTML と呼ばれる HTML と同等の XML ベースの仕様を作り始めることにしました。 この取組みは XHTML1.0 として HTML4 を XML で再構築する所から始まり、新しい連番化を行う以外に新規の機能を追加しない形で2000年に作業が完了しました。 XHTML1.0 以降、W3C の焦点は「XHTML のモジュール化」という形で他のワーキンググループが XHTML を拡張しやすいようにする事へと移って行きました。 また、これと並行して、W3C はそれまでの HTML や XHTML とは互換性の無い XHTML2 という新しい言語の開発に取り組みました。

1998年に HTML の進化が止まった頃、ブラウザベンダーによって開発された HTML 用 API の一部が、DOM Level 1 (1998年)、DOM Level 2 Core および DOM Level 2 HTML (2000年から2003年にかけて)として定義され発行されました。 これらの取組みは次第に先細りしていき、2004年に一部の DOM Level 3 仕様が発行された後、Level 3 の草案作成作業が全て完了する前にワーキンググループは解散しました。

2003年には、XForms という次世代の Web フォームと位置付けられた技術が発表され、HTML の代替を見つけるのではなく HTML 自体を進化させることへの新たな関心を呼び起こしました。 この関心は、Web 技術としての XML の開発が、(HTML のような)既存の技術の置き換えとしてよりもむしろ(RSS や後の Atom のような)完全に新規の技術に限られていたという認識から生まれたものでした。

この新たな関心が生み出した最初の成果は、既存の HTML の Web ページと互換性の無いレンダリングエンジンの実装をブラウザに強いることなく XForms 1.0 で導入された機能の多くを提供するように HTML4 のフォームを拡張できることを示す概念実証(proof of concept)でした。 この初期段階では、草案が既に一般に公開されており、草案に対する意見を広く募っていましたが、この仕様の版権は Opera ソフトウエア社のみにありました。

HTML の進化を再開すべきであるという考え方が2004年の W3C のワークショップで検討されました。 そこでは、(後述する)HTML5 の取組みの根底にある基本方針と、前述のフォーム関連の機能のみをカバーした初期段階の草案の計画が、Mozilla と Opera によって共同で W3C に提出されました。 しかしその提案は、その前に決定された Web の進化の方向性と矛盾するという理由で却下されました。W3C のスタッフと会員はその代わりに XML ベースの後継仕様の開発を継続することを議決しました。

その後間もなくして、Apple、Mozilla、Opera が共同で、WHATWG という新しい組織のもとで取組みを継続する意向を発表しました。 公開メーリングリストが作られ、草案がWHATWG のサイトへ移されました。 仕様の著作権はその後、これらのベンダー3社が共同で所有し、仕様の再利用も可能なように修正されました。

WHATWG はいくつかの核となる基本原則、特に、「技術は後方互換でなくてはならない」、「例え実装ではなく仕様の方を変更することになっても仕様と実装は適合していなくてはならない」、「仕様は、複数ある実装同士がお互いにリバース・エンジニアリングすることなく完全な相互運用性を実現できるほど十分に詳細でなくてはならない」といった考え方に基づいています。

特に後半の要件によって、HTML5 仕様の範囲は、それまで3つの異なる文書:HTML4、XHTML1、DOM2 HTML に定義されていた内容を含める必要がありました。 また、それまで標準とされていたものよりはるかに細かな詳細を含める必要がありました。

2006年、W3C はついに HTML5 の開発への参加に興味を示し、そして2007年、WHATWG と共に HTML5 仕様の開発に取り組むワーキンググループを立ち上げました。 Apple、Mozilla、Opera は、WHATWG のサイトでより条件の緩いライセンスで仕様を管理しつつ、W3C が独自の版権の元に仕様を発行することを許可しました。

それから数年間、2つのグループは共同で作業を進めました。 しかし2011年、両グループはそれぞれ異なる目標を持っているという結論に達しました。 W3C は「完成した」バージョンの「HTML5」を発行したいと考える一方で、WHATWG は仕様を既知の問題があるまま凍結させるのではなく継続的に整備し、プラットフォームを進化させるために必要な新しい機能を追加する形で HTML の Living Standard に取り組み続けたいと考えました。

それ以来、WHATWG は本仕様(とその他の仕様)に取り組んできており、W3C は彼らのバージョンのドキュメントに WHATWG による修正をコピーし、で述べたその他の変更を加えてきました。

最後の2段落が W3C 版の仕様と違っています。 W3C 版では W3C が HTML5 の開発に参加した後、両グループは一緒に活動しています、という所までしか書いてありませんが、こちらではその後2つのグループが異なる道を歩み始めるところまで書いてあります。

この事自身が、上記に書かれている W3C と WHATWG の両グループの姿勢を良く表していて興味深いですね。

HTML イントロダクション 1.7節

Leave a Reply